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AIアバター講師の開発事例:音声対話AIで日本語授業を行うアプリができるまで

// KEY POINTS

この記事の要点

  • 株式会社グローバルキャリアステップ様と、AIアバター講師が30分のマンツーマン日本語授業を進めるアプリを開発しました
  • 授業の台本と教材は人が用意し、AIはその範囲で会話を進めます。教え方はN4・N3・N2相当の3段階で切り替えます
  • 音声のまま応答するリアルタイムAPIと、教材の表示をAI自身が呼び出す仕組みで、人の授業に近い体験にしました
  • 委託前に決めておきたいのは、応答の待ち時間の目標、AIに任せる範囲、接続時間に応じた運用費の想定の3点です

音声で会話できるAIに、授業や接客の一部を任せたいというご相談が増えています。ただ、チャットで質問に答えるAIと、30分間ひとりの生徒に向き合って授業を進めるAIとでは、作り方がまったく違います。授業では、生徒が話し終えてから返事が来るまでの間や、講師の口の動きと声のずれがそのまま体験の質になり、30分でどこまで進むかもAI任せにはできないからです。

外国人材向けのMr.CANDO日本語教室を運営する株式会社グローバルキャリアステップ様と当社は、AIアバター講師が日本語の授業を進めるアプリを開発しました。音声対話AI、アバター映像、教材表示という別々の技術をひとつの授業にまとめるために何を決め、どう作ったかを、開発側の視点で紹介します。

開発の背景

グローバルキャリアステップ様は、技能実習生をはじめとする外国人材に向けて、1回30分のマンツーマンのオンライン日本語授業を提供されています。2027年4月に始まる育成就労制度では、受け入れ企業に日本語の講習が義務づけられ、CEFR A2(日本語能力試験N4相当)の習得が求められます。グローバルキャリアステップ様は2026年7月のプレスリリースで、この需要に低コストで応える指導プログラムを発表されています。

授業の需要が増えるほど、講師の確保は難しくなります。そこで、講師の不足を補う手段として、AIアバターが授業を進めるアプリを検証することになりました。目指したのは、生徒が話した内容にAIが音声で応じ、講師の顔が画面に映り、授業の流れに合わせて教材が表示される、人の授業に近い体験です。

AIアバター講師の授業画面。左に共有中の教材、右上にアバター講師の映像、下に講師の発話字幕が表示されている

展示会用のデモ画面。教材の挿絵はデモ用に用意したものです

AIに任せる範囲

開発の最初に決めたのは、授業のどこをAIに任せ、どこを人が用意するかです。

授業の台本は人が作ります。レッスンごとに、学習目標と使う教材、導入から練習、まとめまでのステップと各ステップの目安時間を決めておき、AIはこの台本の範囲で生徒との会話を進めます。AIが受け持つのは、生徒の発話に合わせて言い回しを変えたり、聞き取れなかった単語の復唱を促したりする部分です。

教え方はレベルごとに指示を分けました。初級はN4相当の語彙でゆっくり話し、ひらがな中心で進めます。中級はN3相当の語彙で自然な速さ、上級はN2相当の語彙で敬語やビジネス表現を扱います。同じ台本でも、レベルによってAIの話し方が変わります。

台本で範囲を決めておくと、AIが授業から脱線したり、生徒の話に応じるうちに時間を使い切ったりすることを防げます。

技術面での判断

構成は次のとおりです。

AIアバター講師アプリの構成。生徒のブラウザが音声対話AIと音声のままやり取りし、AIの音声をアバター生成サービスに送って口の動きを合わせ、その映像を映像配信の仕組みで受け取る。教材の事前分析と会話の記録はサーバー側が担当する

音声対話には低遅延のリアルタイムAPIを使う:
会話が自然に感じられるかどうかは、まず応答までの待ち時間に左右されます。音声をテキストにしてから文章を生成し、それを読み上げる従来の3段構成では、応答までに数秒かかります。このアプリでは音声のまま入出力できるリアルタイムの音声対話APIをブラウザから直接つなぎ、文字への変換を挟まずに応答させています。生徒が話し終えたことをサーバー側が検知し、AIがすぐに応じます。

アバターの口の動きをAIの音声に合わせる:
講師の顔はアバター生成サービスで作っています。AIが話した音声をブラウザ側で変換してアバター生成サービスへ送り、口の動きを同期させた映像を映像配信の仕組みで受け取ります。音声対話、アバター、映像配信という3つのリアルタイム接続を同時に維持し、音声と映像がずれないように同期させる部分が、このアプリの開発で最も調整を要した点です。

教材の表示はAIが自分で判断する:
「ではこの絵を見てください」と言いながら教材を出すのは、人の授業なら当たり前の動作です。これを実現するために、教材を表示する・隠すという操作をAIが呼び出せる機能(Function Calling)として定義しました。AIは授業の流れに応じて生徒の画面に教材を出し、話し終えたら閉じます。人が画面を操作する必要はありません。

教材の中身は授業前に読み込ませておく:
AIが教材について話すには、教材に何が描かれているかを知っている必要があります。授業中に画像を読み取らせると返事が遅れるため、レッスンに登録した画像やPDFは事前に画像認識モデルで分析し、その結果をデータベースに保存しておきます。授業開始時にこの分析結果をAIへの指示に含めるので、授業中の読み取りは発生しません。

授業の経過時間をAIに伝え続ける:
生成AIは時間の経過を自分では把握できません。対策をしないと、導入だけで10分を使ってしまい、練習の時間が足りなくなることがあります。そこで、経過時間、現在のステップと目安時間、表示中の教材、次のステップをまとめた授業の状態を、ブラウザから定期的にAIへ送るようにしました。AIはこの情報には返答せず、ペース配分にだけ使います。

発話の前にAI自身に点検させる:
「必ず質問か発話の指示で終える」「時間を超過しない」といった授業の品質ルールを点検項目として指示に含め、AIが話す前に自分で確認するようにしました。生成AIの出力を安定させる方法には、出力後に別のAIで検査するやり方もあります。ただ、リアルタイムの会話では検査の分だけ待ち時間が延びるため、発話前の自己点検を採用しています。

教材として自己紹介の基本フレーズを表示している授業画面。AI講師が4つのフレーズを順に読み上げている

生徒が答えたあとに、AI講師が講評して授業を締めくくる場面

このほか、生徒に見せる文章にふりがなを付ける処理には軽量なモデルを使っています。休憩中はアバターの接続を切り、再開時に会話の文脈を復元する設計にしました。アバターの接続に失敗した場合も、音声だけで授業を続けられます。会話の履歴とAIが教材を操作した記録はすべて保存され、管理画面から授業の内容を振り返ることができます。

音声対話AIアプリの委託前の確認事項

音声で会話するAIアプリを外部に委託する場合、発注の前に決めておきたいことが3つあります。

1つ目は、応答までの待ち時間の目標です。テキストのチャットなら数秒待てますが、会話では1秒の間でも長く感じられます。目標の秒数によって、今回のように音声のまま応答するAPIを選ぶか、文字を介した3段構成で足りるかが変わり、構成全体もそれに合わせて決まります。

2つ目は、AIに任せる範囲です。授業や接客の進行そのものをAIに考えさせると、品質が安定しません。人が台本で流れを設計し、AIは各場面での応答を受け持つ分担が、現時点ではもっとも確実です。

3つ目は、運用費の見積もり方です。音声対話やアバターのAPIは接続している時間に応じて課金されるため、テキスト生成と違って利用時間がそのまま費用になります。今回のアプリでは休憩中に接続を切る設計にしましたが、1回あたりの利用時間と月々の授業数をあらかじめ想定しておくと、費用を見積もりやすくなります。

まとめ

AIアバター講師の授業アプリは、音声対話AI、アバター映像、教材表示を、人が設計した授業の流れの中でつないだものです。同じような音声対話のサービスを検討される場合は、応答の待ち時間の目標と1回あたりの利用時間を先に決めておくと、使うAPIと費用の見通しが立てやすくなります。AIに任せる範囲は、短い会話のプロトタイプで試しながら詰めていく方法もあります。

この事例は、2026年4月のNexTech Week 2026【春】の当社ブースでもデモを公開しました。音声対話やアバターを使ったAIサービスの開発をお考えの方は、AI受託開発サービスのページをご覧ください。用途の整理から開発、運用まで一貫して対応しています。

よくある質問

Q. 日本語以外の言語でも同じ仕組みで作れますか?

可能です。音声対話のAPIは多言語に対応しており、台本と教え方の指示を対象言語に合わせて用意すれば、同じ構成で他言語の授業や接客に応用できます。

Q. アバターの見た目は選べますか?

可能です。用意されたアバターから選ぶほか、実在の講師をもとにしたアバターの作成にも対応しています。

Q. 音声対話AIのアプリはどのくらいの期間で作れますか?

会話の部分だけなら、数週間で動くものを作れます。今回のようにアバターや教材の制御を組み合わせ、授業として成り立たせる場合は、検証を含めて数ヶ月が目安です。まず短い会話のプロトタイプで体験を確かめてから範囲を広げる進め方をご提案しています。

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